祝う!

「ふぁぁぁ・・・。」
目が覚めると知らない家の中だった。
「ふぇ?ここどこだ!」
ベットから飛び起きて、部屋の外に出ると、やっぱり知らない家だった。
「な、なにここ!あ、えっと?」
誰かいた・・・、な、なんだこの被り物は・・・。
「お、起きたのか。」
「悪魔!?」
「失敬な!この被り物は天使だ!」
「て、天使ぃ?」
耳尖ってるし、眼がなんか怖い・・・とても天使には見えない。
「な、なんだその眼は、まるで私が変なことを言ったみたいではないか!」
「えー、天使には見えないよー。」
「なぬ!?見えない!?むむむ、メダカが入った水槽を被ったやつはそれでいいんじゃないですか?とか言ってたのに・・・。」
メダカ被った人とは一体、というよりそれはテキトーに言っているようにしか思えない。
「と、とにかく、君は何なんだい?」
「へ?わっちが何か?」
あ、そういえば分からない。
「足が無いんだよ、うん。」
「え!?」
下を見ると、確かに足が無い!何てこった!霊体みたいな足はあるけど。
「え?気づいてなかったのかい?」
「ていうか、あなたは?」
「おお、そうか、私の自己紹介がまだだったね、私はテラ=バーサリー、テノムっていう科学者の助手兼メンテ係をしている。」
「メンテ係?」
「あぁ、テノムさんはサイボーグみたいなもんでな、時々第三者のメンテナンスがいるんだよ。」
「へぇ〜。」
サイボーグかぁ、カッコいいなぁ。
「まぁ・・・それはさておき、なんで研究所の前で寝てたんだい?」
「え?わっちそんなところで寝てたの?」
覚えてない、というか今より昔の記憶がまるで無い。
「あー?ひょっとして記憶喪失かなんか?」
「うーん、多分そうだと思う!」
覚えていないのだから、そうなんだ、多分。
「そうなると・・・うーん何か覚えてることとかないの?」
覚えていること・・・?
「あ、祝福!なんか祝福って気がする!」
「祝福?」
「祝福!」
なんでこの言葉なんだろう、わっちに関した大事な言葉なんだろうか・・・。
「祝福ねぇ、それだけじゃなんともなぁ。」
確かに、それだけじゃなんともできない、祝福で何だって感じになるね、そうだね、何か悲しいね。
「お?起きたのかぃあの幽霊みたいな子は、テラ?」
「お、おぅ、起きたぜ。」
「あ、テノムさん?」
多分さっき話題に出たテノムさんだろう、サイボーグ!!
「おぅ?なんで知ってんだ?」
「あ、私が教えた。」
「ま、良いけどな、そうそう、さっき隣の無人町で何か凄い崩落が有ったらしいよ。」
「隣町?あそこ、なんか寂れきってた気がするけどなぁ。」
何の話をしているんだろう。
「ビルは崩落、道路はクレーターとなんかエライことになってるらしい。」
「まぁ、見に行ってみるかな、来るかい?・・・えーと。」
そういえば、自分の名前・・・って?
「あぁ、そっか名前・・・うーん、じゃバーサリーでいいや。」
「自分の名前付けるってどうなのよ・・・(-_-;)」
「いいじゃん!バーサリーなんて呼んでくれる人もいないしー。」
「いいなら、別にいいけどね。」
あれ、なんかこっちには自分に名前を付ける権利が無い感じがないあれですか、そうなんですか。
「じゃあ、行ってみよう!バーサリー!」
「あいあい、行こう!」
もういいや、行こうっと、外に行ってみたいのは確かだし!



「ここか・・・。」
「うぇぇ・・。」
着いた・・・が確かに荒廃してるし、ビルがいくつか陥落している。
「ふむ、成程・・・何かが暴れたようだな。」
え?何かが・・・?
「そ、その何かって、ち、近くにいないよね?」
「さぁねぇ・・・何とも言えないけど、でもこの町に今生き物はいないらしいね、調査によると。」
「そ、そうなのか?」
少しは安心材料になるのだろうか。
「・・・。」
道路を見ている、そういえば何かシミみたいなのが・・・。
「・・・これは、これはなんとまぁ。」
「ど、どうしたの?」
「何かが襲われたのか?これはいわゆる血痕って奴だ。」
「結婚!?」
「まぁ、それは小説でしか伝わらんボケだな。」
そういえばくすみきった紅に見える。
「結構な量だ・・・下手をすれば・・・。」
「ヒッィィィ!?」
「まぁ、亡骸がないから平気だったんじゃない?」
そ、そうだよね。
「もしくは・・・。」
「え!?」
「・・・食べられちゃったとか!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
うつむいた状態から、急にガバっとこんなこと言われたらこうなるよね☆
「お、予想以上の反応だ。」
「お、驚かさないでよぉ・・・。」
「いや、ここまでクリーンヒットするとは、流石に考えなかったな。」
心臓に良くないのであんまりこんなことしないで欲しい。

「ふむ?中々暴れたようだな。」

「くぁwせdrftgyふじこlp;@!?」
誰もいないって言ったじゃないかぁ・・・。
「おや?誰だ?」
「お前らこそ何者だ?私は作った装置がしっかりと働いているか見に来ただけなのだが、少し遅かったようだな。」
「装置!?」
装置という言葉だけで、眼を輝かせている・・・気がする、被り物で顔見えないけど。
「私はテラ=バーサリー!科学者テノムの助手でコイツは私の助手のバーサリーだ!」
「え?わっちはいつからじょ・・むぐ!」
口を押えられた何で?
「それで!その装置というのは一体何なんでしょう!」
「気になるのかい?ふむ、確かに技術者というのは他の優れた技術に触れたくなるものだ、いいだろう教えてやる。」
「本当ですか!」
「むぐ、むご!」
離してくれない、何で?
「・・・そっちの思念体、バーサリーといったか、平気なのか?」
「思念体?」
「ん?違うのか?いやどうみても思念体だ。」
わっちは思念体というのなのか?
「ふーん、思念体ねぇ。」
「むぐ!ふぐう!」
いい加減手を離してほしい。
「まぁ、正直なんでもいいがな。」
「おう!装置のことを早く!」
「今回作った装置は簡単に言えば、力を周囲に拡散されることに重きを置いた小型装置でな、これをカプセル大に私の技術に固め、強力そうな寄生型の怪物でも抑えられる、そしてこの装置の素晴らしいところとしてはまず軽量化と使いやすさにあってだな、飲むだけで起動するように設定することで〜〜〜中略」
「ほぉ!ふむふむ」
全く分からないし、長すぎる。
「〜〜〜中略〜〜〜このシステムを改良すれば、外付けに変更して暴走状態を自分の意思でコントロールできるようなシステムも開発可能でありながら〜〜〜中略〜〜」
「ほぉ、重要なのはあのシステムか。」
「そうだ、このシステムを基盤とすることで〜〜〜中略〜〜〜」
技術者トークにまったくついて行ける気がしない・・・。
「さてと・・・、私はこれから結果を聞きに行くのだ、こんな所で油を売っている暇は無いのだよ、さらばだ同志よ!」
「おう、またいつか会おう!」
去って行った・・・、何だったんだ。
「ぶはぁ!」
やっと手が離れた。
「危ない!色々と!」
「お、平気だったか!」
平気じゃなかったらどうしたんだよ!!
「何話してたの?なんかやたら専門用語ばっかりだった気もするけど。」
「なんのことだ?普通の会話だろ?」
自覚がないのが一番面倒だけどね!!
「まぁ、とにかく、お前は思念体だったんだな。」
そうだ!重要なことを言ってたっけ、科学者トーーーークで完全に忘れかかっていたのだけど。
「Q、そうそう!思念体って何?」
「A、調整中」
「うぇ!?」
「いや、調べてもあんまり情報無いんだよ、数は急に増えてきたし、分からないことが多いし、誰か思念体について調査してくれるとありがたいんだがね、私はそういうの専門じゃないから。」
「なるほどぉ・・・。」
「ま、此処のことはさっきの思念体に任せて私等はちょっと思念体調べるか、せめて貴方のせいしつg・・・ん?」
「どったの?」
「あー、そっかそういうことか。」
「え?何々!?なにか分かったの?」
「さっきは思念体っていうのが頭に入ってないから何とも言えなかったけど、祝福ってアナタの性質なんじゃない?」
「せーしつ?」
何だろう。
「うん、思念体っていうのは必ず、何かしらこの世界にあふれる感情や行動などを具現したものっていうのらしくてね、それに関わった性質っていうのを必ず一つだけもってるらいのね。」
「わっちは、それが祝福なの?」
「他に考えられないし、そうじゃない?」
「やった!!わっちの秘密が一個解けた!!」
特大クラッカーを鳴らすわっち!めでたい!!
「どっからそのクラッカー持ってキタンダヨ。」
「え?なんか持ってたんだよ!」
「そ、そうか、しかし科学者として質量保存の法則を・・・。」
「いいじゃん!」いいじゃん!」
「う・・・ううむ。」
なにかよわよわしいのは気のせいだろうか。
「ああ、すまん、予想を超えると若干テンションが落ちるだけだ、気にするな。」
「あぁ!そうなの!」
「ともかく、この町に特に用は・・・」
「どったの?」
急に背後を見つめるテラ。
「いや・・・気のせいだ、研究所に戻ろう・・・。」
「う、うん?」
何だったんだろう・・・。







「あぶなーい、バレたのかと思ったー。」
「ソンナこと良いですから早く働いてくださイ。」
「うえーい、元人厳しいー。」
「黙って働いテ!消人!先人に怒られるヨ!」
「うへへ、そうだね。」
「ン?・・・いヤ?あの感ジ・・・。」
「どったの?」
「まァ、いいでス、今はこちらガ優先。」




「ふーん、それで?思念体だった訳だ。」
「そうなんですよ、はい。」
「そうそう!」
やっと一歩前進だメデテェ!
「思念体について何か情報無い?」
「思念体ねぇ・・・、あ、そういえばなんか思念体がいる教会があるとかなんとか、聞いたな、図書館経営してるやつもいるんだとか。」
「へー、行ってみよう!」
「うん、行ってみよう、私も気になるな、テノムは?」
「うーん、調べたいこともまだあるし、私は残るよ、2人で行っといで。」
「何かあったのかい?」
「えーと、まだ確証が掴めないし、まだまだ調査中だよ。」
「あ、そう、じゃ手伝うときが有ったら呼んで!」
「もちろん、呼ぶさ。」
何か信頼関係を感じたけど、同時に何か上下関係逆じゃないって気もした。
「さてと、出発!」
「うん!レッツゴー!」



「結構歩いたね。」
「そうだね、足無いんだけど!」
「あぁ、そっかそうだよねー。」
「さて、一個聞いていいかい?」
「なんですか?」
「教会ってどこ?」
「E?」
「ははは、場所を聞き忘れるとはな!」
「・・・。」
ノープランだったのか。

「キャハハ!お探しの教会はこっちだよ!」
「!?」
「ったく、なんでコイツと組ませられる上に布教活動させられるんだか。」
「目玉!?」
二人の何かがこっちに来た、片方には足が無い。
「あれ?ひょっとしなくとも思念?そっちの青眼玉。」
「誰がブルーアイズだ、俺だけじゃなくこいつも思念だ。」
「キャハハ、指さすなや。」
「え?足あるよね?」
思念体は足が無いのがデフォルトではないのか。
「コイツは稀有な例らしいな、他に全身有る奴は見たことがないな。」
よく見たら、髪が霊体になっている気がする。
「というか、この辺なのか教会ってのは?」
「キャハハ、全然違うよ!むしろ真逆。」
「えー!テラどうするの!?」
これでは、思念体について知るどころではない
「ところでお前ら、教会によからぬ理由で来ようとしてるんじゃないだろうな?」
青い目で睨まれる私達、布教活動なのに案内してくれないのか。
「え、いやいや、この子について知れたらなーって。」
「ソイツについて?」
ジロジロ見られている。
「なるほど?他の思念に会えば、なにかヒントが得られるかも、そういうことか?」
「そ、そうそう!」
「何だー、信教者じゃないのかー。」
どうやら教会関係者だが案内はしてくれない様だ。
「ガッカリされてもねぇ・・。」
「ゴメンね!」
「そういうことなら、俺たち以外に聞くんだな、俺たちはそういうことのためにぃ!?」
「うっせぇ、馬鹿!」
「!?」
青眼の方に赤髪のストレートが入った、これはヤバいんじゃないか?
「ぐ・・・、急になんだ。」
「なんか語られんのイヤ!」
「あ、じゃ、じゃあしつれーしまーす。」
あの拳は勘弁していただきたい。



「でもどうしようか?もう道迷った時点で万策尽きたけど?」
なんでやねん。
「なんか機械とかないの?道分かるようなの。」
「あ・・・そっか!」
被り物を探るテラ、どっかの青いキャットロボットみたいなことしてるな。
「あ、これは!?」
「テテテテン、金属探知機〜・・・って今いらんわ!」
「なに一人芝居してるの。」
「おう、ツッコミは冷静だな・・・。」
「でも、被り物とって探した方が良いんじゃないの?」
「あ、そうだな!」
被るものをとると普通の女の子だった!声も変成器みたなので変わってたみたい。
「あー、無いな〜。」
「そんな、色々入ってそうなのに・・・。」
頭が良い人は大抵どこか抜けているというが、それなのか?
「でも、何でそんな被り物してるの?」
「え?いやぁ、いろんな人に素顔見せんの恥ずかしいじゃん。」
「そんな理由で!?」
「その通り!悩みというのは他人から見れば、大概くだらないものなのだよ!」
さっきより声が高い所為なのか、可愛く見える。
「そっか!そうだよね!」
「な、なにを?」
肩を組むわっち。
「じゃあ、私の悩み、もっと明るく過ごしたいっていうのも分かってくれるよね!」
「ったく・・・、分かるよ、もちろん。」
むこうも肩を組んできた、うん、いいよねこういうの。
「さて!それじゃ!さっそく」
「なに?なにか良い考えでも?」
「・・・・いや、何にもないけどね!」
「ナイノカーイ!!」
ずっこけてしまった、だってまだこの辺どころか何にも知らないもん。
「ま、まぁいい、そういえばよいアイテムを持っていることを思い出した。」
「え!?なに?」
本当は有るんだ!
「じゃーん!じゃ、じゃーん!」
「おれベクt」
違う。
「これこれ、スポットサーチャ〜。」
「・・・ふぇ?なにそれ。」
マイクとレーダーみたいなのが一体化した機械を手に持っている。
「この道具は何と、探したいものをこのマイクに言うと、探してきてくれる優れものだ!」
「そんな便利なもの有ったのかい・・・!」
「ただねぇ・・・これ音声認識が甘いんだよねぇ、アナログ入力も付けときゃよかったよ。」
「とりあえず!やってみようよ。」
やってみないことには始まらない。

「まぁ、そうか、じゃあ試しに・・・、えーとテノムの研究所!!」

「・・・。」
レーダー画面に何か映っている。
「・・・なんで五か所もあるんだよ・・・!」
確かに五つ○が出てる。
「・・・でも!出たは出たよ!」
「これ、絶対的に検索しくじっている気がするのだが。」
「いいよ!だって何もないよりはいいじゃない!」
「まぁ・・・そうだがぁ・・・。」
テラの手からレーダーを取り、
「さぁ、案内したまえ!機械よ!」
レーダーに従い動く。
「こっちか!!」
「・・・こっちか?」
滝の中に表示が有る。
「いや、絶対的におかしいよな、そうだよね。」
「滝、この中に研究所が・・・。」
「無いよ!」
突っ込んでも、流されるだけかぁ。
「行ってみる?」
「いやいや!?おかしいよね!!」
「デデーン!次行こう!」
落ち込んでても仕方ないのだ .
「というか、目的ブレブレだな。」
「え?」
「思念体の調査に来たのに、結局家に帰るはめになるし、それにも苦戦して何と言うか・・。」
「馬鹿っぽいよね!!」
「ハッキリ言うか!!?」
だって隠しても嫌じゃない。
「・・・」。
「あ・・・。」
「どうした?」
「あれ!」
「?あ・・・。」
何と研究所に着いた。
「ったく・・・レーダーを貸せ。」
「あ、はい。」
素直に返そう、うん。
「他の地点はどうなっているか見てくる。」
「え?」
何でだろう。
「それを見れば何て検索されたか、わかりそうだしね。」
「あ、そっか!」
そうだね!そういうのが気になりそうだね!科学者は。
「じゃ、ここで待ってな、見終わったら帰ってくるから。」
「あいあい!いってらっしゃい!」
「じゃあ、ちょっと待っててな〜。」
「はーい。」
さて、これからどうしようか、とりあえずテノムさんと話そうかな。
「お邪魔しまーす!」


「・・・あれ?」
すんなり入れたが返事がない・・・
「うーん?」
家中探すが、テノムさんが見当たらない。
「ここかなぁ・・・。」
冷蔵庫の中にもいない、一体どこに行ってしまったのだろう。
「テノムさ〜ん!」
「なんだい?」
「え・・・。」
何か違和感、あ、足元に穴があいて・・・足無いけど。


「わぁぁぁ!?」
浮いているとはいえ、ある程度の高さを決めて飛んでいるので、急にホールが出来たら流石に落下しますとも、はい。
「あー、浮いていてもこうなるんだー、ふーん。」
「いたた・・・。」
背中を軽く打った、けど地面が柔らかかったので、大して痛みは中田よ。
「・・・いきなりなに〜?」
「いや、申し訳ない、好奇心に打ち負けてな、それで何の用だい?」
「あ・・・えーっと、!」
近くに写真立てがある、テラとテノムさんの写真が。
「テラさんって何者というか、テノムさんとどういう関係なの?」
「テラとかい?テラは何故か一人でこの辺に来たんだよ、そしたら急に、助手にしてくれって言われたからさ、まぁいいかって。」
「そ、そんなあっさり・・・。」
「だって断る理由も無いんだし、人手は有って困るもんじゃないし・・・!」
そんなものなんだろうか・・・。
「そういえば、数年前の今日だったな、テラが助手にしてくれって来たのは。」
「え!?」
思わず身を乗り出していた。
「な、なに!?なんか不味いこと言った?」
驚くテノムさんでもそれより言いたいことが。
「いや!それなら何か記念のパーティでもしようよ!!」
「はい?」
「だって、それっておめでたい事でしょ!だったら祝おうよ!」
何故か体が勝手に動いている。
「うーん、まぁしてもいいんだが。」
「本当!?じゃあやろうよ!」
「ただ、なんの用意もないぞ。」
「いいの!いいの!とにかく気持ちがあるのなら!物は二の次三の次!」
「そういうもん・・・か?」
日付をしっかり覚えているんだから、祝う気持ちはあるはず!
「さぁ!準備しよう!」
「お、おう。」










レーダーを見つめるテラ。
「・・・もう一か所がプロトの研究所、もう一か所がテクノの研究所・・・、それでもう一つがあの丸い研究所、ということはあの滝の中にも研究所があるってことか・・?だがもし機械の故障で表示されていたら一発で色々おじゃんだよなぁ・・・検証はやめとくか。」



「さぁこっちは、終わったよ!」
「まぁこっちも何とか、というか味見しすぎじゃない?」
「いや、ヘチマってこんなに美味いものかなーって。」
これは、覚えておかねば。
「いや、知り合いに農家がいてだな、そいつが、ヘチマって食べれるんだよとか言って、いっぱい持って来たんだよ。」
「へぇ〜。」

急にアラームが鳴った!
「あ、もうすぐテラが帰ってくるな。」
「じゃあ、最終準備だね!」
どんな反応するんだろう。

「ただい・・・。」
「おかえり〜!!」
「!?」
速攻でクラッカーを鳴らすわちき、反動でぶっ飛ぶもテノムさんが止めてくれた。
「いや、テラが弟子入りして数周年記念ってことでさ・・・。」
「・・・。」
(無駄に)飾られた部屋を見渡して俯くテラ。
「あ・・・え?」
「発案はわちき!!」
「・・・あぅ。」
「気に入らなかったかい?」
ずっと俯いている。
「・・・う、」
「?」
「うわわわわわぁぁ!!」
急にわちきに抱きついてきた。
「ど、どうした?」
驚くテノムさん、そうだよね、その反応で良いんだよね。
「・・黙って泣かせて、グスッ・・・・。」
「・・・?」
なにかあったんだろうか、被り物の上からでは表情が読めない。
「・・えぐ、ありがと・・・バーサリー。」
「ど、どういたしまして?」
何がどうなっているのかまったく読めない、けど感謝されたならいいか。
「と、とりあえず、部屋に連れて行ってやれ、後で祝おうな。」
「え?う、うん。」
「・・・。」
確かにそれは一理あると思う。
「最初寝てた部屋あるだろ?あそこがテラの部屋だ。」
「わかった。」
「行く?テラ?」
無言で頷く、何でこんなに・・・。




部屋に着いた、とりあえずベッドの上に座って落ち着くのを待った。
「と、とりあえず、平気?」
「・・・うん・・。」
「急にどうしたの?何か悪いところあった?」
それならわっちの責任だ。
「・・無いよ、お祝いしてくれること自体は嬉しい・・。」
「じゃあどうして急に?」
喋り方が少し、変な気もするけど。
「・・・バーサリー、ちょっとだけ昔話に付き合って・・・。」
「え?・・・う、うん。」
何だろう。




私は昔から、機械をいじったり作ったりするのが好きでね、こういう自由な研究所っていうの人に憧憬していたし、いつかは自分のラボが欲しいなって思っていたんだ。

「へぇ〜・・・、良い夢ね。」
「その時は希望に満ちていたからね。」

でも、現実はそんな甘くないってね、土地も財もない私は家でずーっと孤独で機械の開発していたんだ。

「・・・。」
「現実って怖いよねどんな夢でも霞ませるんだもの・・・。」

そんなある日ね、ある人物が優秀な技術者を探す試験をしている、っていう話を聞いたんだよ、優れた腕前のメカニックにはあらゆる協力をするっていう特典もあるらしいからね。

「そんな試験が!」
「どこから入った情報かわかんないのだけどね。」

これで私の夢も叶う、私もその人に会って、協力したいと希望をいや、藁をも掴む思いでその会場に向かったんだ、遅刻をしちゃったんだけど。

「え?遅刻しちゃったの?」
「興奮しちゃって・・・。」

そして、その技術者を見極めるテスト会場を見つけたんだ、でも・・・見付けなければ良かったと今でも思っている。

「え?」

私がそこで見たのは死屍累々、地獄絵図そんなものしか例えられないような状態になっていたんだ、
 
「!?」

横たわる白衣らしき物を着ている人、それを見据える数人の人、そして大きな蛇、あれは直視しちゃいけないものだって分かった。

「え?え?」

でも蛇と目が合って、急いで逃げた、その時に私にあったのは、そんな夢は消えゆくものだと突き詰められたような思いと、あんな物を見てしまった恐怖心が混ざり合った何とも言えない、絶望感に満たされていたんだ。

「・・・。」

正直言えば恐怖心よりも夢を木端微塵に破壊された方がショックだったんだ。
あぁ、やっぱり私は夢を見ないで孤独でやっていればよかったのにって、自分で思って悲しくなったよ。

でも恐怖心が返ってくる出来事が有ったんだ、その試験会場にいた一人が追ってきていたんだよ、見たからには帰せなイってね。

銃口が無性に怖かった、でもそれで、この感情が消滅するならいっそここで、なんてことさえも考えてしまったんだよ。

「それって・・・。」

全てを諦めてここで散るのも最悪悪くないって、眼を閉じようとしたら、白い羽が見えたんだ、世間的に考えてそれは天使だと思ったけど、見えた瞬間私を抱えて飛び立ったの。

「えぇ!?」
「いや本当に。」

何発か攻撃が当たってるのに平気で遠くに飛んでって、私に言ったのよ。

「若い夢はここで終わらせちゃいけないです、想いが欠片でもあるのなら尚更。」

その言葉が何でか心にすごく響いてね、わずかに悲しみは消えたの、そして飛び去る時に私にもう一言、言っていったの。

「あ!メイドって何ですか?」

「え?なにそれ!?」
「さぁ、なんであんなことを聞いて来たのか分かんなかったなぁ。」

正直頭のなかはグチャグチャだったし、チグハグにしか答えられなかったと思う、でもその天使は頷いて。

「そうですか!ありがとうございます!」

その時の私が見たことも無いような満面な笑顔を残して飛んで行ったんだ。

「そ、それで!?」
「うん、その後にもう少し頑張ってみようと思ってね、適当に歩き始めたんだ。」

そうしたら、なにか建物が見えてね、フラフラな体でドアを叩いたんだ、そしたら。

「どうしたんだい?」

テノムが出てきたんだ、その時は科学者って知らなかったんだけど。

その後、なんの詮索もせずとりあえず休めって言われて、色んなことがあったから落ち着く為に休ませてもらおうと思ったんだ。

(さっきテノムさんそんなこと言ってなかったな。)

そうして、家の中に入った瞬間、なんか安心感が湧いちゃって大号泣しちゃったんだよ、今よりもね。

「お、おい!?どうした?」
「うわぁぁぁん!」

「ひょっとして泣いた理由って・・・。」
「・・・あのレーダーで研究所ばっかり見てきて、その上日付が同じでね、ちょっと思い出していたんだ・・・それで家に入った瞬間壁に飾られたリースとアナタの笑顔なんかが、あの時の天使にダブって見えちゃって・・・もう鮮明に思い出しちゃって、幼い自分が夢を想い描いて、砕けて散って、集めて進んだ日のことを・・・さ。」

「・・・。」
「それにバーサリー、アナタが家の前に倒れていたときからちょっと記憶の隅に蘇ってきていたの、昔の自分もこうだったのかなって。」
そうだったのか、そんなことが・・・。

「たはは、忘れてしまうつもりだったのにね。」
「テラ・・・!」
思わずわっちは泣きながらテラに抱きついてしまった。
「・・・・・。」
特に拒む様子は無かったむしろ、受け止めてくれた。
「・・・バーサリーはバーサリーでもお祝いとかフェスが大好きなバーサリーか、フェス=バーサリーってとこかい?」
「わっち?フェス=バーサリー・・・。」
聞こえた名前を繰り返す。
「・・・テラ!辛い時が有ったらいつでもわっちに言って!いつでも明るく!励ますよ!」
「ふふっ・・・号泣しているやつが何言ってんのさ?」
「ほぼゼロ距離だから分かるよ、テラだって泣いているじゃない!」
「そうかもね。」
この時、私はこの被り物は憧れだけで付けたものでは無いんだと初めて思った。


「あぁさっきの励ますって話だけど・・・」
「?」
一度体を離した、何だろう?
「私だけじゃない、誰だって何にだって、祝って励まして祝福して応援してやってくれ、昔の私みたいな奴だって救える子だよ“フェス”アンタは!」
まっすぐわっちの目を見てる、と思う。
「でも今はテラを・・・!」
「祝いたいんだろ?」
「うん!」

この後したパーティがわっちの最初のパーティだった、すごく楽しくて、わっち自身も楽しかった、この後から、テラの言った通り、皆を祝うために色んなところで色んな人、日とかを祝っていった!














「あの時のパーティは忘れられないよ!」

「私もさフェス!」

「だけど・・・!」

「分かっているさ、思念体である以上は向こうに行けないかもしれないって、相談しに来たのだろ?」

「う、うん!」

「だったら、私に言えることは一つだけ・・・。」

「若い夢はここで終わらせちゃいけない、想いが欠片でもあるのなら尚更。」

「!」

「フェス貴方は全てを祝うっていう夢も希望もあるのだから!」

「う、うん!」

「だから安心しろ!きっといけるさ!私は向こうにいくしな!」

「でも、テラ!・・・その向こうに行く方法って!」

「テノムも同意の上だし!私のトラウマのことなら気にするな!もういいんだ!過ぎたことだ!」

「そう・・。」

「また会おうな?」

「・・・もちろん!」

そしてまた二人が出会うのは、もっと先のお話で。