重なる。
私が目覚めたのは小さな町の中、周りの人がこっちを見ている、私は何故ここにいるのだろう。
(なに、アレ。)
(脚がないわ。)
(人じゃないのか?)
口を開けている様子が無いのに言葉が入ってくる、まるで心を読んだように、どうやら私は心が読めるらしい。
(起きた!)
(ちくわ大明神)
(害はないのかしら。)
よくわからないことを考えている人もいたが、とりあえず、この町を出よう、正直疑念を抱かれ続けられてもこっちの気が滅入ってしまう。
(どこへ行くんだ?)
(浮いた!)
(襲いかかってこないのか?)
無視をして出て行く、心を読み続けてもロクなことは無さそうだ。
町外れまで来た、ここは何なのだろう、まぁいいや。
とりあえず昔のことを思い出そうとしても駄目だ、何も思い出せない、まるで脳だけ生まれたての様だ。
「おや?誰だ?そこにいるのは?」
「!?」
誰かいたのか、油断しきっていた。
振り返ると、手袋から白い紐が伸びた女の子がいた。
「おおーう?見ない顔だね、しかも脚がないね。」
「え??」
違和感を覚えた。
「どったの?」
心になにも思っていないのか、まったく、内心が読めない。
「うーん?ちょっと肌寒いのに、シャツ一枚って寒くない?」
「え・・・まぁ。」
確かに寒くない訳は無い、脚が無いとはいえ下に何も穿いてないし、上も二枚位しか着てないのは春先の気候では肌寒い。
「だったらさぁ、家においでよ!」
「良いのですか?私脚ないですし、得体が知れませんよ。」
自分でも何で脚が無いのかわからないのに、誰かの家に行って家族を戦慄させてもいけないのではないか、そんなことをふと思った。
「いいの、いいの!私一人暮らしだし!」
「は、はぁ。」
断れる空気では既に無かった、この子にとってはもう決定事項らしい。
「わわっ!」
急に手を引かれてバランスを崩しながらもついて行く、脚はないけれど。
「さぁ、let's go!」
「ここ?」
「そう!」
何というか、普通の一軒家である、普通が何かわからないけど。
「あがって!あがって!」
「では。」
足が無ければ靴も無いので、そのままあがる、リビングのような所に案内されたが、全て1人前しかなく本当に他の人が住んでいた様子は無い。
「あ、こっちきて!」
呼ばれた、何だろう。
「うーん?」
行ってみると凄く見られる、あぁ服がなんとやらのことかな。
「!!?」
いきなりシャツをめくられた、流石に恥ずかしい。
「な、な、なにを!」
「腰辺りはあるのね、じゃあスカート穿けるよ。」
「え?」
そういえば、どのへんまで無いのかわからなかった。
「うーんと、どれにしようかなー。」
「・・・。」
だからっていきなりあんなことをするとは、相変わらず何も考えていないし。
「あった!これがいいよ。!
渡してきた、スカートは白地に黒い稲妻マークがはいっていた。
「こう、ズビシッ!としてるじゃない!きっと似合うよ!」
「・・・は、はぁ。」
ベルトやらを勝手に巻き始めていた、どうやら着ることも決定事項らしい。
「ほら!似合うよ!可愛い!」
「え・・・。」
思わず言葉が漏れてしまった、素直にそんなこと言われたことがまだ無かったのだ。
「そ、そうですか?」
耳まで熱い、私は照れ屋なのかもしれない。
「さぁ、これで靴を履けば!アナタはぱっと見なんでもない!これで!アナタが何者か調べられるわ!」
え、そのためにこれを着たのだろうか、でも足元は隠れていて確かにぱっと見なんでもない!・・・様だ
「あ、そういえば自己紹介まだだったね!」
コホン、と一息つくと
「私は西崎 重、まぁ一人暮らしなのはキニスンナ!」
「は、はい・・・、私は・・・、私は?」
名前がわからない、なんて名前なんだ私。
「あら?名前わからないの?これは早く自分探しの旅にでないと!」
またもや手を強引に引かれ玄関へ。
「うーんと、えーと、」
玄関の棚をがたがたと探っている。
「あ、あった!ほらこれ!」
手の上には黒い靴が
「私の足に入らなくなっちゃて使わなくなった靴!まだ綺麗だし、アナタは大きさなんて関係ないよね!」
というと、私の足に靴を引っ掛けてきた、なんと引っ掛かった。
しかし、出たのはいいが、あっちいったりこっちいったり、一貫性がない、まさか迷っていないだろうか。
「あの。」
「うん、迷った。」
「え?」
「あー、まさかこんな入り組んでいるとはね〜。」
「ちょ、ちょっと・・・。」
思わず地面にへたり込んでしまった、もう気力の限界である、もう二時間近く歩いているのだ。(足がないので歩くといえるか微妙だか)
「まぁ、まぁ、あそこになんか建物があるからそこで道聞こうよ。」
「・・・!」
建物があるのか、それなら・・・!
「あ、あれ?」
浮かばない、どうやら疲れると足が無くとも動けなくなるらしい。
「私が抱えてくよ、よいしょっ!」
「ちょ、え?」
急に抱えられて何も言わない訳はない、というか、なんでこんな怪力なんだろう、脚は無くとも上半身の分の重みはあるはず。
「わぁーーー!?」
「あはあは!走ろうと主ってさ!」
まさか抱えられたまま、全力疾走されるとは思わない。
ただ、考えていることは相変わらず読めない、本当に何でだろう、本当になにも考えずにいるのだろうか?
真っ直ぐ扉に向かって走る、重。
「すみません!誰かいますか!!」
勢いよく扉をあけた、鍵は掛かってなかったようだ。
「誰だい?」
「お!人?」
声のするほうを見てみると、そこにいるのは人ではなく、丸い体にハチマキメガネの、よくわからんのがいる。
「うーん?何かようかい?」
「え?いや、道に迷っちゃってさまよってたら、ここが見えたんで。」
「あぁ、じゃあ、近くに街があるから道を教えてあげるよ。」
助かった、これでなんとかなりそうだ。
説明を聞いている重、私は近くにあった椅子に腰掛け丸い方の心を読んで、道を聞いていた。
どうも近くにうごメモ町とかいう、そこそこ大きな町があるという、そこに行ってみたらとのこと。
「うん、大体分かりました!ありがとうございます!」
「困ったときはお互い様だよ。」
「それじゃ!」
「え?!わうっー!」
またわたしを抱えて走りだす重、楽ではあるけど少し抵抗が。
「ここね、うごメモ町っていうのは。」
着いた、のだがなんだろう、発展している。
「よし、じゃあ!アナタの正体探しだ!」
「は、はい。」
そうだ、目的がブレる所だった、危ない。
「ん?見ない顔だな旅人か?。」
近くにいた何か細い人が話しかけてきた。
「まぁそんなところ。」
「そうか、まぁ、ゆっくりしていくといい。」
優しい人、本心からそう言ってる。
「ありがとうござい・・・あ!そうだ!」
「ん?どうした?」
「あの、足のない種族って知りません?」
「足の無い?幽霊じゃないなら1人こころあたりがあるな。」
幽霊はこの町だと普通なのか。
「向こうで図書館を経営している、性格は悪いが、理由もなく暴力はしないと思う。」
「そうですか、じゃあちょっと聞いてみますね!」
また、走りだす、あ、抱えられたままだ。
「あー、いたいた!先輩!なにしてたんスか?」
「いや、なんか、今後またあう気がしてな、あの抱えられている奴と。」
「?」
「ここか、図書館って。」
大きい、なんかすごい。
「あの、そろそろ降ろして頂いて平気です。」
「あ、あぁゴメン。」
降ろしてもらうものの、まだ疲労は抜けきっておらず、フラフラする。
「さぁ…入るよ!」
扉をゆっくりとあけると…
「お邪魔しまーす。」
薄暗いが図書館として良いのだろうか。
「あ!イハンらいきゃくだよ!らいきゃく!」
なんか、女の子がいた、足はある。
「あんまり、騒ぐな。」
なにかが本棚の後ろからぬーっと、出てきた。
「あ、足がない!」
「なんだ、いきなり出会い頭に。」
確かに足が無いし、足があるはずの所には私みたいな、霊体がある、髪は唐辛子みたいな色になってる。
「なに?オレの種族が何か…だと?」
「えぇ、それを今調べてるの。」
「!」
何かに気付いた様だ。
「ふむ…なるほど、奥の奴がオレと同じ“思念体”と言う訳か。」
え?私って思念体って言うのでしょうか?
「え?分かるの!?」
「何となくだが読める、まぁ性質まではわからんが。」
「性質?」
性質ってなんだろう。
「何だ?何も知らんのか。」
首を縦に振ると、心から馬鹿にされている、性格悪そう。
「…まぁ、いいか、思念体ってのは、どうもこの世界の想いや行動から生まれるみたいだ、詳しくはオレも知らないがな、そして生まれながらに何かしらの“性質”とやらがある、オレは“違反”の性質をもってるらしい、らしい。」
自信は無いのか、そうか私と同じ様に急に出現したのならそのことに自信は持てないだろう。
「他には“平和”だの“欲”だ“我慢”だ“信仰心”だとかいるが、オレは詳しく知りません。」
「そ、そうですか、じゃこの子の性質は?」
「知らん。」
即答だった。
「他の奴まで知ったことじゃない、知りたいなら勝手に調べろ。」
「ごもっとも。」
とりあえず図書館を後にした、なかなか有意義なことが聞けたと思う。
「性質ねぇ、なんか心当たりある?」
性質か、一つだけ引っかかっている単語がある。
「重複?」
「はい、それだけなぜか心の隅に引っかかっています。」
「じゃ、重複の思念って訳だ!」
重複の思念、すごくしっくりくる。
「それで心を読むなんて能力あったんだね!」
「…え?」
何を言っているのだろうか?言った記憶はないのだけど、なんで?
「だって私がアナタの心を読めるもん。」
「へ?」
そういえば、何度か会話に違和感があったような。
「私はね、私を対象にした、特殊な能力を跳ね返す能力があるみたいなんだよ!心を読む力なら、逆に読み返すみたいな感じで!」
なるほど、私が心を読もうとするたびに反対に読まれていた、というわけだったのか。
「なるほどな、それがお前の能力ということか?」
「!」
声のするほうには、さっき図書館にいた違反の思念体がいた。
「な、なんですか?」
「いや、ほかの奴は知ったことじゃないが、オレ自身のことを知るためには他の思念のことを知るのも必要だからな。」
「な、なるほど?」
そういうもの、なのか?
「なんで疑問系なんだか知らんが、まぁいい。」
「本当に心を読めているかテストしてやろう!」
「!?」
彼の心では真っ直ぐとこちらに星を飛ばしてきている。
(アイツが本当に心を読めるなら避けれるはず……!?)
「あ!?」
「へ?」
だが彼の撃とうとした星は真っ直ぐに彼に向かっていた。
「ぐぇっ!」
油断していたようで回避出来なかったみたいだ、星が直撃してのけ反りながら叫ぶ。
「…どうなっている!まるで技をそのまま盗られたみたいだ!」
「自分でも、よくわからないんですが。」
本当にそうなのだ、撃たれたくない、そう思ったところまでは覚えているのだが、イマイチどうしたのか覚えていない。
「凄い…の?」
重が言葉を漏らす、重の能力では心を読む能力以外を使えないようだ。
「わからない。」
自分でもなにがなんだか。
「…お前…。」
唐辛子みたいな思念が立ち上がった、殺気立って。
「ひぁっ!?」
「ゴゴゴゴ安心しろ怒ってないから。ゴゴゴゴ」
心を読む、(怒)(怒)(怒)(怒)(怒)いや、めっさ怒っとる。
というより自分の口で擬音つけてるのか。
「ただそこで棒立ちしていればいいのだよ。」
ヒィィィィィィィィィ。
「ちょっ、ちょっと!落ち着いて!」
「なにを言う、思念史上類を見ないほど落ち着いているではないか。」
重も見てわかるぐらい、怒ってるよね、これ。
無心で撃てば平気だろ、って考えていた、え?
「いや、ちょっ、ちょっと!」
次の瞬間無心の“違反さん”の手にはエネルギー体が発生していた。
「は か い だ ん」
「あ、」
「え、」
「キャャァァァァァ!」
空を舞った私と重、幸い直撃ではなく、爆風に吹き飛ばされたようだ。
「あ、やりすぎたー(棒)まぁいいや。」
近くの森の中に落下、木に見事に引っかかった、あるんですね、本当にこんなこと。
「いたた、平気?重?」
「まぁ、何とか、小傷だらけだけど。」
私もだ、小枝に体中を引っ掻かれてる。
「でも生きててヨカッター、あれまともに食らったら多分ただじゃすまないよ。」
私もそんな気がする、ワザとかはわからないけどあのエネルギー弾は私達の目の前の床に被弾したのだ。
「追ってこないよね?」
「た、多分来ない・・・さ。」
とりあえず、ずっと木と一体化している気もないので降りようとしたのだが。
「あ、あれ?」
枝に腕をとられて動けない。
「あれ、私も腕動かないや。」
見事に二人ともハマってしまったようだ。
「あれ?なんか引っかかってない!」
「え?どこですか?」
声がした、たーすーけーてー。
「あ、本当ですね、助けてあげてください。」
「キャハハ任された!」
「うわぁあぁ!?」
木を高速で蹴り始めた、揺れる!お肌に枝が食い込む!
「痛い!痛い!ちょ、ちょっと…!」
「あ。」
「どうしたのです?」
ストップと言おうとしたのだが…、あれ?視界が傾いてるような。
「キャハハ、折っちゃた。」
「え…。」
「あー!?」
「ウワワ!」
地面に叩きつけられると同時に枝が折れて、開放された、ただすんごく痛い。
「だ、大丈夫ですか?」
「何とかね、あ。」
「きゅう…。」
この時私は気を失っていたようです。
「キャハハ…ゴメン。」
「おーい?」
「あらあら。」
「…うん…。」
「あ、起きた?ピオネロ!」
「…はい?」
誰でしょう?ビオトープ?
「えーっと、呼ぶ名前無さそうだから、適当に付けた!」
「適当ですか。」
「え?意味はあるけど、まぁ、いいじゃん。」
私の名前なのに…。
「これからはピオネロって呼ぶね!」
「…。」
こっちの思考は無視ですか、そうですか、でも。
「悪くないですね。」
「え?」
「ピオネロって名前。」
「でしょ!」
なんだか妙にしっくり来たので、自分でもそう名乗ろうか。
「じゃあ、私は今からピオネロです。」
「正式決定!やった、ってことは今日が誕生日だよね。」
そうなりますね。
「口ではなしてよ!はい!これ!」
「これは。」
大きな黒い帽子に、重と色違いの手袋?
「帽子は個性、手袋はお揃い!へへへ。」
「ふふ、そうですね。」
嫌な感じはしなかった、気がする。
「でね、ピオネロはさ、これからどうするの?」
「え?」
そうか、それは考えていなかった。
「どうしましょうか?」
「えー?聞く?」
「私にはどうすればいいのか思いつかないのですが。」
本心だ。
「うーん、そういえば近くにお屋敷があるらしいね、あそこなら住めるかも。」
「お屋敷?」
「うん、結構大きいのが。」
確かに大きいお屋敷ならば部屋が空いているかも。
「家にいさせてあげたいけど、完全に1人用の家だからねー、ごめんねー。」
「いえいえ。」
検討してくれただけで嬉しいですね。
「あ、そう?そう言って(?)思ってくれると助かるよ!」
「そうですか?」
「うん!そうだよ!じゃあその館までは一緒に行くよ!」
「ありがたいのですけど、迷わないですよね?」
「も、もちろん!!」
しかし前科一件。
「すぐ近くだし、平気!行こう!」
重が心を読めるのは私が読もうとした時だけみたいだ。
「ところで重ってその能力どう思ってるのですか?」
「?」
正直に聞きたいことを今聞いてしまおう。
「何も能力がない人達は力を欲しがります、でも持っている側の私は不安で怖くて仕方ないです。」
「…はっきり言っていい?」
「はい、もちろん。」
「ど う で も い い 」
「え?」
「能力が有ろうと無かろうとその人はその人だし、代わりはないよ、アナタも心が読めなくてもピオネロだよ。」
「読めなくても?」
「じゃあ、ピオネロ、アナタはもし私の能力が無くなったら嫌いになる?もし私が星を消す力があったら嫌いになる?」
「え?いや、そんなことは…。」
「そ、本当に大切な友になるってことは、能力や力、例え心を見透かす能力だったとしても関係ないの。」
「…。」
「そんなんで差別されたら私に言いな!そいつが理解するまで説得してやる!」
「ありがとう、重。」
「いや、お礼はいいよ、たって当然のことだもん。」
「それでも、です。」
「ひひひっ、じゃあ行こっか!」
面白い笑い方ですね。
「ここですか?」
「うん。」
確かに立派なお屋敷ではあるのだけど。
「住まわせて貰えるんでしょうか…。」
「確かに立派過ぎて逆に平気かわからなくなったね。」
「ん?なんだお前ら?」
(面倒だな、来客か。)
門番らしき人がきた、顔は帽子で隠れているけど、そして心では本音が出てる。
「ダメですよ、仕事は楽しまないと。」
「え?何?何?何のこと?」
(なに?うーん、やっぱり面倒そうだなぁ。)
「あの?責任者の方とお話できませんか?。」
「え?責任者?何で?」
(とっとと通せば寝れるかな?)
この人は余程この仕事が面倒なようだ。
「お願いします!」
(いいや、通しちゃえ。)
「いいよ、じゃあ、ステッラさん!来客です。」
「誰だ?…。」
「思念体と人みたいですけど。」
「ふぅん、まぁ通していいや。」
「あ、撮影係留守です!」
「いいよ、直に来させちゃってよ。」
中に入れたのはいいけど広い、中で普通に迷いそうだ。
「ここです。」
(やっと寝れるわぁ。)
「ありがとうございます、そしておやすみなさい。」
「え?あ、うん、どうも?」
首を傾げたまま、行ってしまった、心を読めるとは気付かなかったようだ。
「失礼します!」
「ちょっ、重さん!」
いきなりドアを開けないで下さい!
「やぁ。何のようだい?」
広い部屋だ、しかし、人は一人しかいない。
「あの、このお屋敷広いですよね。」
「あぁ、広いね、確かに広い。」
「なんでこんな広いの?」
「うーん?あんまりハッキリは分からないんだよね。」
完全に困り顔だ。
(理由聞いとけばよかったなぁ・・・。)
「あ、いえ、困っているのならいいですけど。」
「あぁ、そう?それで初めに残るようだけど、何のようだい?」
「え〜っと、あの、この子の住む部屋を1つもらえないかなぁって・・・。」
「部屋を1つ?いいよ。」
「あぁ、無料じゃ無理ならって・・・え?」
「いい、いい無料で、罪悪感が残るなら適当に家事とか掃除してくれればいいし。」
「そんな、あっさり。」
(あっはっは、心配してたけどそんなことならいいやー。)
「・・・。」
「じゃ、じゃあお願いします。」
「好きな空き部屋に住みな。」
「はい!ありがとうございます!!」
「でも広いですね・・・。」
「じゃあ一番端っこのここは?窓近いし。」
「うん、此処にします。」
「じゃあ!また会おうね!」
「はい。」
「あれから、ずっと過ごしていますけど特に嫌なことは一度ないですね。」
「いい家見つけたね。」
「・・・家ごと移動ってできるんでしょうか?」
「あぁ、新しい世界のこと?」
「思念体はどうもいけないらしいんですけど。」
「え・・・?」
「どうも思念体っていう存在自体が新世界にいけないらしいんです。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「私はね・・・ピオネロ。」
「なんでしょう?」
「貴方に会えてよか・・・」
「いつか、また会いましょう?」
眼があった、泣きそうです、私も重も・・・。
「あ・・・うん!」
「ここで終わりじゃないですよ・・・きっと・。」
「そうだよね!」
「そうですよ。」
お互いの心を読まずとも言いたいことは分かった。
「「いつかまた!!」」
そしてまた、2人が出会うのは、もっと先のお話で。