現れる。

「・・・・。」
「うあ?」
体を起こすとそこは、荒れた街の裏通りだった、周りを見渡しても、人の気配はない。
「何だ、ここは、ゴーストタウンか?」
しばらく裏通りを進んでも、何もいない、壊れたビル荒んだ町並みしか視界には映らない、何があったんだここは。
 しばらく進むと自分に足はなく、浮いていることに気付いた、ついでに左手も実態が無い。
「なんだこりゃ、靴は引っかかっているみたいだけど、明らかに人の体じゃないね。」。
左手を振り回したり、足を振り回したりしてみる。
「あー、こりゃいい、普通の腕よりも融通が利きそうだ、足もスカートがバサバサうっさいのを除けば完璧だ。」
何故か落ち着かないので、近くに落ちていた、小さいバケツの蓋を被り更に先へ進んでいくと。


「!?」
殺気を感じた、急いで避けるも背後に気配が。
「チッ!」
左の袖が引きちぎられた、が、そっちに噛み切られて困るものは無い。
「化けモンか?」
「グガァ!」
人型を取ってはいるが、明らかに人ではない、全身がグロテスクだ、しかも言葉も通じなさそうだ。
「そうか!アンタがこの町がこんなになっている、理由だな。」
「グルグア!」
常に回避に徹しなければやられるという直観を信じて避け続けるものの、向こうがバテる様子は一向にない、このままだと私が避けられず倒されるのは眼に見えている、とはいえ反撃に移る暇がない。

「あぶなっ。」
頬を掠った、頬に液体の伝う感触、まずいこれは、自分がどんなことを出来るのか、全く分からない。
「しまっ!?」
一瞬考えた隙に、奴の蹴りが腹にまともに入ったと思うと、そこで意識が途絶えた。


「ゲホッ、ガハッ。」
目覚めると、町から真っ直ぐ私のところまで床がえぐれていた、そして体が半端ではなく痛い。
「生き・・・てんだ、・・私。」
破られた袖を見つつ呟く、そして悔しみも込み上げてくる。
「・・・くっ・・・・そー!」
「生きてる!?」
「!?」
人の気配、臨戦態勢に入ろうにも、体が上手く動かない、地面に這いつくばりながらも視線を上げると、眼を閉じた女の子が立っていた。
「・・・あん・・だ?誰・・だ、あんたは?」
オロオロしながら答える。
「え、えっと、傷、平気?」
「・・・平気に・・見え・・るかい?」
眼を閉じているように見えるのだが、こちらが見えているのだろうか。
「ごめんなさい、見えないんです、ですけど、血の匂いが結構します。」
「!」
気が付かなかったが服がくすんだ赤色をしている。
「ケッ・・・こん・・なエグイこと・・になってる・・とはね。」
「あ、あの、良かったらで良いのですけど、治療しましょうか?」
「いら・・んわ、じゃあ・・な。」
飛ぼうとしたのだ、だが上手く飛べずに地面にダイブしてしまった、まるで体が言うことを聞いてくれない。
「・・・ち・・くしょ・・・!」



「!?」
「あ、起きましたか?」
目覚めると、私はベッドで横になっていた。
「どうなっているか、簡潔に教えろ。」
「えっと、ばったり倒れてしまったので、私の家まで連れてきて、服を着替えさせて、元の服を洗ってます。」
そういえばさっきと服が違う。
「なるほど・・・まったく・・・助けなくていいって言ったよな?」
頼んだつもりはないし、助けられるならあそこでくたばった方がましだ。
「い、いえ、あの、その、実は、その傷の原因は私というか、その。」
「なに?」
あの化け物の関係者だったか、被害者を助けようとしたのか?だがコイツの第一声は確か「生きてる!」だったような。
「つまり、あの化け物の飼い主か何かか?」
「え!?いや、まぁそういわれれば、そうなんですが、厳密にいうと違うような。」
「ハッキリ言え!」
思わず叫んでしまった。
「え、そ、その信じてくれるなら、話しますけどぉ(泣)」
何で涙目なんだこいつは、どんだけ気弱なんだよ。
「信じてやるから、とっとと話しな。」
「あ、あの化け物は私の中にいます。」
「・・・。」
信じるといった手前、最後まで聞くが、一体何を言っているんだ?コイツは?
「そ、それで、私が目を開けると私の体を乗っ取って暴れまわるみたいなんです。」
「はぁ。」
だからコイツは一向に目を開けないのか?
「その状態であなたに会ってしまってこんな目に・・・。」
「つまり、あの化け物に乗っ取られたアンタが私を襲った、そういうこと?」
「はい・・・。」
まぁ、私も片手なしで足無しだから何とも言えないのだけど。
「あの、それで、服の片腕縫った方が良いですか?」
「いいよ別に、早く持って来い。」
部屋の外へと出て行った、おそらく私の服を取りに行ったのだろう。
それにしても、悔しさが込み上げてくる、戦ったのにボロ負けして、その上その戦った相手に治療されたのだ、悔しくないわけがない、目の前でデカい砂の城作られて「忙しいから、お前作ったんでいいよ♪」って言われて評価される位悔しいのだ。
「あ、あの、これ服です。」
綺麗に畳まれて帰ってきた、あの紅さはもう無い、それともう一つ持っていた。
「何だこれ?」
「じゃがバターです。」
じゃがバター?何故こんなものを?
「よ、よかったら食べて?」
「・・・パクッ。」
妙に美味そうに見えたので食べてしまった、まぁ毒が盛られていようが知ら・・・
「・・・美味い!!?」
「本当・・!?」
しまった、油断していた、こんなに美味いものなのか?この芋は?
「良かった、私それしか作れないの。」
「そうかよ、美味しかった。」
「へ?」
「何でもないわ!ところで1つ聞きたい。」
持ってきた服に着替えつつ話す。
「な、なんですか?」
「お前はその化け物との共存は良いと思っているのか?」


「そ、それは・・・。」
明らかに良くは思っていない。
「だったら、何とかしようとは思わないのか?」
「・・・グスッ。」
マジ泣きし始めた。
「お、おい?」
「わだし、だっで、・・・嫌だよ、でも、コイヅば・・わだしの意思とば関係なく定期的にあらわれるでば、町ををあらじで、みだぐもない殺戮ジョーを見ざせられて・・・。」
「・・・。」
コイツは・・・。
「えぐっ、ううぅ・・・。」


「分かったよ!私が何か解決策を探してやる。」
「え゛?」
なぜこんなことを言ったのかわからない、けど、そう思ったのだ、思ったのだから止める意味は無い。
「でぼぉ・・・。」
「いいから泣きやめ、お前は今、定期的って言ったよな?ってことは、次に暴走する時期が分かるんだな?」
「グスッ・・何となくは・・・。」
「次はいつだ?」
「一週間後の今位。」
「あん?そんな正確にわかんのか?」
「・・・もう百回以上暴走しているから、嫌でも覚えたわ。」
「そうか。」

幸いもう飛べそうなので部屋の窓に腰掛け、
「安心しな、次が最後だ、来週ここで待っていな。」
「あなたは一体・・・?」
自分でも分からなかった問い、しかし心の隅の言葉を解き放つ。
「表閖出、表現の思念さ。」





しかし、どうすればいいのか、全く分からない。
「とにかく、アイツをブッ飛ばせばいいのか?」
だが、この方法は最悪の結末も予想できる、奴を消すということは宿主である、アイツも一緒に消えてしまう危険性がある。
「手詰まり・・・か。」
「あら?お困りなのですか?」
「うん?」
まさか返事が返ってくるとは思わなかった。
「なんだ、お前は?」
「え、あ、私はルチア=サプレス、我慢の思念です。」
「思念?」
そういえば足が無い、私と同じだ。
「んで?何の用だ?」
「いえ、お困りならお話を聞こうかと。」
「・・・ほぅ?」
正直他人に頼るのは自分で許したくはないが、今は少しでも情報が欲しいところだ、このまま打つ手なしでアイツと戦うのは多分無理だ。
「?」
「ま。まぁ兎にも角にもだな・・・」
全てを話した、とにかく何でもいいから策を練るための情報が必要だった。
「なるほど・・・つまり、その子の中にいる怪物だけを倒したい、そういうことですね?」
「そういうことだ。」
「そうですね・・・。」
なにか考え込んでいる、もしかすると何かヒントが出てくるのかもしれない。
「この近くにプロト=フィロソフィアという方のラボがあるのですが、そこでならもしかするとなにか分かるかもしれません。」
「プロ?」
ラボがあるということは、科学者か・・・、確かに科学者ならこういったこと・・・、
「何だ貴様ら?私に何か用か?」
「!?」
後ろから急にあらわれた白衣の女、足は無いが発言からするにコイツがプロト=ソファ?
「あ、丁度よかったです、実は・・・。」



「なるほど、それで私が何か策を思い付かないか・・・と?」
「そうなんですよ・・・ね?」
「ま、まぁな、なんかあんのか?」
少し考えごとをしている、急にどっかに字とか書きださないだろうか。
「そうだな、いま丁度研究対象が無くて退屈していたところだ、なにか作ってやろう。」
「そうですか!良かったですね!」
「ていうか、口頭だけで平気なのか?」
口がドヤァに変化していく。
「私を誰だと思っている、世紀の大天才科学者、プロト=フィロソフィアだ!」
「・・・。」
このテンションについて行く気はない。
「明日、作戦を貴様に授けてやろう、明日また此処に来ることだな。」
そう言い残すと何処かへ飛んで行った、比喩じゃなく本当に。


「さてと、世話になったな、長前髪。」
「え?それ私のことですか?」
「じゃなー。」
「(  )ω‘ )ムシサレター」

「・・・」
夜になったがすることは無い、いや有るには有るのだ、自分の力の事である。
確かに何か策が有ったとしても、結局あの化け物にもう一度会わなければいけない可能性、つまりもう一度アイツと戦わねばならない可能性は十分にある。
そっと左腕を見る、霊体になっているので腕なのかは微妙だ、でも手の形になっているから、きっと腕なのだろう。
「・・・。」
なんとなく弾丸とか出ないかなとか思ったら。
「!?」
なんとなんと、出ました弾丸。
「出来んのかよ!?」
驚いた、まさか何となくでやったことが自分の能力のヒントになるとは。
いや?待て?これは物体にダメージは与えられるのだろうか。
しかしこれだけじゃ渡り合えないのは明白、今日は寝ずに能力も模索しよう。







「おや?どうしたやけに眠そうじゃないか?」
「ほっとけ・・・。」
眼の下にガッツリなクマ有るくせに、人の眠気の度合いまで気にスンナ。
「まぁいい、完成したぞ!この装置だ!」
「そう・・・ち?」
どうみても、カプセル薬です、はい。
「見た目はともかく、装置には違いまい?この装置をその化け物が弱った所で飲ませれば、ほぼ封印できたに等しい、というわけだ。」
「なるほ・・・は!?弱ったところ!?」
そうきたか。
「そうだが?そいつも生物なのだろう?それならば戦っていればガス欠になるのだろう?というかガス欠やら衰弱が来て強制解除になって、ソイツは平常心に戻っているのではないか?」
そうか、なるほどそれは一理有るが、しかしどの程度なのだろうか。
「おそらく、その化け物はもう力を回復し始めている、すでにそれを使っても効かない可能性はある、それ故に力を使い切ったところ、というわけだ。」
「つまりは、私がソイツとガス欠になるまで戦わなければいけないってことかよ。」
「その通り、よくわかっているではないか。優秀、優秀。」
まったく嬉しくない褒められ方も学んだところで、そろそろ寝よう。
「ったく、なんとかするよ、じゃあな!」
「結果は報告しろよ!」
「はいはい。」
研究者はそうだよな、結果欲しがるよな。






「面倒なことになりましたよ。」
「放っておけ、奴らに止められるならその程度というわけだ。」
「そういうものですか。」
「そうだ、信人、そういうものだ、有事の際の戦力にならない様な奴は要らないのだよ、それに・・・、もう十分すぎるほど彼女は働いたよ。」
「そうなんですか、了解。」




近くに空き家があったので屋根に登り、空を見る。
「・・・・・、晴れてんな、ま、これでも寝れるが。」
とにかく、次に起きたらまた能力について試してみよう。



「うむ・・?夜・・・か?」
昼に寝れば夜に起きるのは当然か、そういえば、ここ本当に空き家なのか?
表札には(西崎)と書いてあった。
「知らんな。」
というか、住んでようが、いまいがそれどころではないのだ。
「あの化け物と戦えるようにならないとな。」
1人で何処まで強くなれるかは分からない、でも負けられない、負けるわけにはいかないのだ。
「・・・。」
アイツの泣き顔が頭から離れない、赤の他人でどうだって良いはずなのに、あのじゃが芋のせいなのだろうか、きっとそうだ、もう一度アイツのじゃがバターが食べたいから、アイツを助けるんだ、私は。
鍛錬な日が過ぎ。





あっという間に約束の日の朝になってしまった。
「さてと・・・!」
気合を入れなおす、もしかしたら今日で私は・・、でも後悔はしない、自分で選んだ道なのだから止まるつもりもない。
「待ってろよ、化け物が・・・!」


寂れた街に着いた。すぐ入り口にアイツはいた。
「まさか、本当に来るなんて。」
「来ないとでも思ったのかい?」
そう思われていても仕方がない、小学生が素手でゴリラに挑んだ位、前回はボロ負けだったし。
「・・・あと数分で出てきます、逃げるならいm・・・」
「逃げるかよ馬鹿が!」
即答してやった。
「ふぇ!?」
「任せな!今日でその数奇な運命はお仕舞だ!」
「っ!」
目の前で急に倒れる、そういや名前聞いてない。


「うぐぐ、がぁ。」
ドンドン化け物染みた姿になっていく、だが化け物は一度見ているし、変身も予想通りだ。
「さてと。」
「ア゛?」
こちらを見た途端襲い掛かってきた!
「グルァ!」
真っ直ぐした突進を回避するものの、思ったよりも速い。
「前は体力ギリギリだったって、ところか?」
ラッシュを仕掛けてくるも、なんとか全部回避するものの、次の一手が真っ直ぐこちらに飛んでくる。
「前までの私と同じだと思うなよ!」
左腕からつらら型の刃をブッ飛ばす!
「ガァ!?」
被弾した、傷は出来ないが、ダメージは与えられる技なのだ、これは。
「この場合は最適かもな!」
肉体ではなく化け物自身へ届く一撃。
「ガルガガァ!!」
猪突猛進、まさにそれである。
「愚直だ!馬鹿が!」
回避しつもりだったが角が生え・・・
「チィ!」
肩を掠める一撃、うっすら服が濡れた感触、不味いな。
「まだ変身できるとは考えてなかったね。」
「ガァァァ!!」
両腕が刺々しくなっていく・・・、あんなの刺さったら、即終わりである。
また突進だが、さっきよりも破壊力はまったく違う。
「嘘だろ?」
近くのビルが沈んだのである、アイツの突っ込んだビルが。
「グァッァァ!」
「どうする・・・?」
さっきの技にしろ何にしろ、私は能力を連発できないのだ、力を使えば使うほど、左腕が縮むんで能力が使えなくなるようなのだ。
「っと、危ねぇ!」
僅かに掠っただけで分かる、当たればそこで・・・。
「ガワァ!!」
「休む時間は無いか・・・!」
がっつり攻めてくる、どんどん周り崩壊していくが、まぁ、もうこんな寂れた街ならいいか。
「っしょ!!」
もう一発確かに懐に入ったのが・・
「いっ!?」
カウンターのごとく懐から一撃が飛んできた、まともに喰らってぶっ飛んでしまった。
「ゲフッ、そんなことまで出来んのかよ。」
懐から腕が出てくるとは、しかも棘つき、腹がエグイが知らん、まだ戦える。
「ガウガウガアッ!!」
ったく、あとどんぐらい持ちこたえればいいんだよ。
「もう一発だ!」
また当たった、回避をする気は無さそうだ。
「ガウァ!!」
ともかく回避に専念、次喰らったら流石にヤバい。
どうにか、避けれているが、こっちの反応速度が明らかに落ちている、もらい過ぎたか。
「三連打ァ!」
全弾命中、したが怯む気配はない、自分に当てたときはかなり痛かったのだが、どうやら痛みを感じて止まるほどの知能はないようだ。
「グウァ!」
「舐めんな!」
姿を消す技も取得済みだ、さてくるか?
奴の技は空振り道路に穴を空ける。
「ぐぅ・・・。」
瓦礫が飛んでくる、バシバシ当たって地味に痛い。
「ガァ?」
「!」
こっちを見た、耳が良すぎるだろ・・・、こっちの一瞬のうめき声に反応するとか・・・。
いや?待てよ?
(これで!どうだ!)
近くの瓦礫を思いっきり投げ、近くのビルの窓を粉砕。
「ガァァ!!」
そっちに突進していく、馬鹿だ。
「!」
ビルを一瞬で粉々にした後こっちに来る!
そうか、瓦礫を投げた方に来たわけか。

「・・・・一か八か・・だ!」
「ガ?」
ステルスモードを解除。
「グギャヤギャオ!」
「来いよ!」
ギリギリまで引き付け。
「この技が駄目なら、もう知らん!」
左腕が輝く。
「この技は自分の半径10M位の物をぶっ壊す技だ!」
「グギュギャギュ!ギャ!」
流石に効いている・・・か?
「!?」
こっちに攻撃してきた、不味いこの能力発動中はまともに戦えない。
「クッソ!」
ギリギリでかわそうとするが、何発も被弾。
「グ・・・グギャァ・・・!」
「もう少しみたい・・・ね。」
アイツが弱っているのは分かる、しかしこれ以上私の体がもってくれるか分からないが。
「グルギャーーーーー!!」
真っ直ぐこっちに突進していくる、最後の力って感じか・・・。
「来いよ。」
体を考えれば避けれないのは確実、だったら。
「正面衝突だ!」
「ガァァァァァァ!」

「ゴクリ」
「ザクリッ!!」

口に装置が入った。
私の腹に奴の角も。


「な・・・なんで、そんなに私何かの為に?」

「さぁね?なんでだろうね?」
平常心に戻ったってことは効いたのだろう。
「まぁ、これで・・・アンタは・・・じゆ・・・う・ガハッ。」
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
「・・・。」
意識が朦朧としている。
「生きてよ!あなたが倒れたら意味がないよ!」
「・・・ァ。」
言葉が出ない、喰らい過ぎた。
「グスッ、眼を開けでよぉ!」
そこで私の意識は途絶えた。













「・・・うん?」
起きると、布団の中だった、前にいた家では無かったが。
「!?」
布団が半端ではなく湿っていると思ったら、あいつが布団の上に頭を置いて寝ている。
「ツっ・・。」
腹の痛みがさっきまでのは夢でも悪夢でも無かったと告げている。
「クァ・・・。」
腹を抑えてもう一度布団に戻る、完全に治ってない様だ。
「お、起きたかい?」
「!」
声の方へ頭を向けると。丸い、なんだコイツは、ハチマキにメガネ?何だこいつは、あ、二回目だ。
「正直驚いたよ、体貫かれたままで担ぎ込まれたときはね。」
「貫かれた・・・まま?」
ということは、角出たままだったのか?
「ま、なんとなく手術上手くいったから、良かったな。」
「アンタが手術をしたの・・・か?」
「まずかった?」
別に裸見られて恥ずかしいとかじゃなく、その、あの、何か胡瓜みたいな腕で手術をしたのか?
「・・・。」
「どうしたい?腕をジロジロ見て?」
「・・・何でもないよ。」
「感謝するなら、そっちの子だね、手術手伝った後にずっと看護していたから。」
「看護?」
「あぁ、アンタが丸々3日位寝たままだからな。」
「!?」
「流石にその子は二日目で力尽きたがね。」
「そうか・・。」
顔が真っ赤だ、泣きながら寝ている、心配・・・かけたな。
「起きたら言うよ、まだ傷治りきってないんだから寝ていな、生きられただけでも祝福もんだ。」
「お、おう。」
寝ろオーラがうっすら出ていたし、今の私にはまともに反論する元気はない。




「・・・。」

「あの!すみません!」
「ん?どうし・・・!?」
ボロボロの人?を抱えている。
「あの、ぞの、えっと、だすげて!」
「おい、落ち着・・・?」
よく見ると抱えている側の角が真っ直ぐお腹を貫いていた。
「え?どうなっている?」
「どにがく!ちりょ゛うを!」
「え、あぁ、分かった。」
「でぎるの?」
「まぁ、多少は・・・。」

ここには何故か難民がよく来る、この前は、迷子の二人組だったが、ずっと昔には医者?が来たこともあった、(不老不死の研究も成功させたのだよ!本人談)
その時の一宿一飯のお礼にと医療技術を教えて行ってくれたのだ。
「難しいなぁ。」
「この私の医療技術があれば、あと1時間で大型トラックに轢かれてくたばりかけの奴も助けられるようになる!」
「そ、そんなスゲーの!?」
「もちのロンだ!」

そんなこんなで医療スキルを得てしまったのだ、そこそこなLvまで。
「まさか、使う日が来るとはねぇ・・・。」
「よし、そうだな、角は刺したまま、そこに寝かせて。」
「は、はい。」
抜くと、一気に色々出てしまい、体へのショックが大きいらしい。
「さて、手伝ってもらうよ?」
「も、もちろんです。」


「成功・・・だな。」
「本当!」
「まぁ、後は本人が意識を戻すのを待つだけだな。」
「あ、ありがとうございます!」


「事情は聴かなくてもいっか。」
いつもそうしている、話したい奴が話せばいい。



「・・・うぅん、あ、意識戻りましたか?」
「うん、さっき戻ったよ。」
「本当に!?」

「ったく、騒がしい。」
「あ・・・・。」
「助けてなんて言ったきお・・・」
「よがっだーーー。」
いきなり抱きついてきた。
「私の為に犠牲になるなんて絶対に許されないんです。」
「何のはな、ふぐぉ。」
いあたたたたた。
「あんまり、強く抱くと、傷口痛むよ。」
「あ!すみません、つい、その、あれ、ノリで!」
「チーン。」
痛さでまた意識が。
「表閖さん!表閖さぁん!」
痛みを堪えつつ、1つ聞きたかったことを、聞いてみる。
「そ・・・そういや、アンタは何て名前なんだい?聞いて無かったね。」
「私・・・私は一口日目です。」
「ずいぶん奇天烈な名前だな、まぁいいや。」


「じゃがバター・・・。」
そうだ、大切なことを忘れるところだった。
「へ?」
「感謝してんなら、じゃがバター作って。」
この為に多分戦っていたのだから。
「う、うん、今作るよ!」
「じゃがいもなら、山とあるぞ使いな。」
「ありがとうございます!」


「使いなと言ったが・・。」
「・・・。」
目の前には山と積まれた、じゃが芋とバターが。
「はむっ、うん、美味いな。」
「そ、そう、よかった、厨房が広くて手間取っちゃったけど。」
「いや、だからってこんなに。」
「構わん、全部私が食べるよ。」
「え?」
「こんな、美味いもの残すのは嫌だからな。」
「表閖さん・・・。」
「出でいい、一口。」
「じゃあ、私も日目でお願いします。」
「そうか、日目、ハグッ。」

「また、作ってくれ。」
「はい、いつでも言ってくださいね。」

「もう、いいやこのじゃが芋入れてた。袋やるよ。」
「え、あ、ありがとうございます。」
「もぐむぐ。」
何か日目がこっちを見ている、何を考えている。
「えい。」
頭に袋を被せてきた・・・!
「なんだこのフィット感は!?」
「え、被れそうだなって思ってさ。」
そんな理由で、でもこれは・・・いい、持ち手が顔にかかるが直せばいいや。
「まぁ、ありがとな、これはずっと被るかな。」







「むぐっ、そんなことも有ったな。」
「はい、あの時はしんでしまうかと。」
「ハッキリ言ってくれるね、まぁサンズリバー手前だったのは事実だったけど。」
なにか向こう側が見えていたのかもしれない、覚えてないけど。
「でも本当に思念体って向こうに行けないの。」
「さぁねぇ。」
「消えちゃったら・・・私。」
泣きそうなほど不安な顔をして俯いている。
「・・・どうなろうが私は生き続けてみせるわ。」
「出・・・。」
「お前はアイツに連れて行ったもらえ、そしてそこで」

「すぐにじゃがバター作らせるから待ってな。」
「ぷっ、あははは、そうだね、そうだよね。」
「な、なんだよ真面目に決めたのに!」

「出っていつもそうだよね、なにかっていうとじゃがバターだよね。」
「あ?」
「本当のことは多分いつも誤魔化してるよね。」
「・・・アグッ。」

「・・・お前何でそんな勘良いんだよ。」

「・・・また会おう?」
「ふん・・・無論だ。」

そしてまた、2人が出会うのは、もっと先のお話で。